階段のてっぺん

小規模多機能をご利用の
87歳の女性。

認知症の診断を受けて
10年目。
ガーデンをご利用になって
7年目。

昨年 足を骨折してから
歩くことが出来なくなり
車椅子での生活に
なりました。

歩いていたころは
ガーデンの中を
自由に歩き
壁に貼ってある掲示物を
ポケットの中に‥‥
花瓶に活けてある花を
靴下の中に‥‥
床を歩いている虫を
パンツの中に‥‥
(ToT)/~~~
トイレからスタッフの
悲鳴が聞こえたことも
ありました。

気持ちの波の
浮き沈みが激しい時期も
ありました。

機嫌の悪いときの
口ぐせは
「ぶっ殺してやる!」
通りすがりに
叩かれることも度々。
この頃を知っているスタッフは
よく笑いながら
「今日は○子さんに
5回ぶっ殺されたよ」
などと言っていたものです。

私の思いを
だれも分かってくれない。
言葉で伝えることが
‥‥できない。

どうしたら
落ち着いてくれるのか…
こちらの思いは
言葉で伝わらない。

本人も
家族も
ツライ時期だったと
思います。

それから数年。

認知症の進行とともに
その時その時で
大変なことがたくさん
あったと思います。
それでもご家族は
在宅での生活に
こだわった。
施設という選択は
「ない」と言いました。

ご家族に
その覚悟があるのに
私たち
小規模多機能のスタッフで
支えなくてどうする。
そんな思いで
今日まで
寄り添ってきたつもりです。

認知症という病気で
困ってしまうことが増えた時、

「進んだ」とか
「ひどくなった」とか
あんまり
言いたくないですね。

ガーデンのスタッフは
“階段をのぼった”
ってよく言うんです。

階段を1段づつ
ゆっくり上る人もいれば
1段とばしで
急いで上る人もいる。

その人が
階段を上るとき
心と体に
ケガをしないよう
階段に散らばっている
石ころを
どかしてあげるのが
私たちの仕事です。

○子さんは
ゆっくりと階段を上り
今は てっぺん近く。
毎日「ハイッ!」
って言いながら
元気よく手を叩いています。


てっぺんの景色は
どんな感じですか〜?

○子さんに聞いてみても
教えてはくれません。



今日もニコニコと
笑っています。